入居者対応をLINEに一本化する実務手順
この記事の要点
入居者対応の一次窓口をLINEに寄せると、電話・メールでの対応漏れや記録の欠落を防ぎやすくなります。総務省の調査ではLINE利用率が全年代で94.9%、60代でも86.3%に達しており、年代を問わず定着したツールです。ただし緊急連絡や金銭に関わる話は電話・書面での確認を残すなど、LINEに寄せる範囲の線引きが必要です。
目次
入居者からの連絡が電話・メール・来店に分散していると、誰が何をいつ聞いたのか、あとから追いにくくなります。担当者が不在のときに電話を取った人が用件をメモし忘れると、そのまま対応漏れになることも珍しくありません。連絡の入り口を一つに寄せ、記録が残る形で受け付ける仕組みを整えると、少人数の管理会社でも対応の抜けを減らせます。ここでは、入居者対応の一次窓口をLINEに寄せる場合の具体的な進め方を、受付から引き継ぎまでの順に整理します。
なぜ窓口をLINEに寄せるのか
総務省情報通信政策研究所が公表した令和5年度の調査によれば、LINEの利用率は全年代で94.9%、60代でも86.3%に達しており、もはや若い世代だけのツールではありません。入居者対応の窓口をLINEに寄せる提案をすると「高齢の入居者には向かないのでは」という反応が返ってくることがありますが、10代95.0%、20代99.5%、30代97.9%、40代97.8%、50代93.7%と、年代による差はそれほど大きくありません。報告書自体も「全年代では、『LINE』の利用率が90%を超過。年代別でも、10代から50代で90%を超過。」と記載しています。
加えて、LINEヤフー株式会社はLINEの国内月間利用者数が2025年12月末時点で1億ユーザーを突破したと公表しています(ベンダー公表値)。この規模感を踏まえると、入居者の側にも「LINEなら新たにアプリを入れなくても連絡できる」というハードルの低さがあります。電話番号やメールアドレスを別途聞き直す手間も省けます。
LINEに寄せるもの・寄せないもの
すべての連絡をLINEに集約すればよいわけではありません。水漏れや火災、ガス漏れなど、放置すると被害が拡大する緊急連絡は、電話でその場のやり取りを完結させたほうが安全です。契約内容の変更や退去精算など金銭に関わる話も、LINEだけで完結させず、書面や電話での確認を残す判断が必要になります。
LINEに寄せるべきなのは、設備の不具合報告、日常的な問い合わせ、書類のやり取りの入り口など、記録として残すこと自体に価値がある連絡です。緊急かどうかの線引きをあらかじめ決めておかないと、現場の担当者ごとに判断がぶれてしまいます。次の章で触れる受付テンプレートと合わせて、どの連絡をLINEで受けてよいかの基準を先に決めておくことをおすすめします。
最初のメッセージで何を聞くか
LINEで一次受付をする最大の利点は、聞くべき項目を先に固定できることです。入居者からの最初のメッセージ、または受付担当者が最初に送る質問には、次の項目を入れておきます。
- 建物名・棟名
- 部屋番号
- 症状・困っている内容(できるだけ具体的に)
- 発生した時期・気づいた時期
- 写真(設備の不具合や破損は特に有効)
- 折り返し連絡が可能な時間帯
このうち写真は、電話だけの対応では得にくい情報です。現地に行く前に状況がある程度わかるため、訪問の要不要や必要な部材の判断がしやすくなります。テンプレートは定型文として保存しておき、受付担当者がそのまま送れるようにしておくと、担当者による聞き漏れの差を減らせます。
受けた連絡をどう記録し、誰に引き継ぐか
受け付けた連絡は、その場で終わらせず記録に残し、担当者に引き継ぐ流れを決めておく必要があります。国土交通省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」では、借主等からの苦情対応の標準的な流れとして、事情を聴取し、現状を確認したうえでオーナーに報告して処理方針を協議し、必要な是正の申し入れなどの措置を行い、オーナーと申出者の双方に処理結果を報告する、という段階が示されています。LINEでの受付内容は、この最初の「事情の聴取」にあたる部分の記録として使えます。
記録が必要なのは社内の都合だけではありません。国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルサイトによると、管理業者は委託者であるオーナーに対して、少なくとも年1回以上の頻度で管理業務の実施状況を報告する義務があります。この報告事項には、入居者からの苦情の発生・対応状況も含まれます。日々のLINEでのやり取りをそのつど記録しておけば、この定期報告のための集計作業も減らせます。営業所・事務所ごとに配置される業務管理者が、誰が・いつ・何を受けて・どう対応したかを追える状態にしておくことが、記録を残す実務上の目的です。
営業時間外の設計
LINEを窓口にしても、営業時間外の連絡すべてにその場で対応できるわけではありません。ここは「時間を問わずすべて解決する」と約束するのではなく、営業時間外にできることを受付と一次案内、そして緊急時の引き継ぎに絞って設計するのが現実的です。
まず、何を「緊急」として扱うかを先に決めます。水漏れ・ガス漏れ・鍵の紛失による締め出しなど、放置できない事案をリストにしておき、それ以外は翌営業日の対応になる旨をあらかじめ案内文に含めておきます。緊急時は誰に一次連絡が入り、誰が現地対応の可否を判断するのか、連絡先の順番まで決めておくと、担当者不在時の判断のばらつきを防げます。営業時間外に受けた連絡は、翌営業日の朝一番に確認する担当をあらかじめ決めておくことも、対応漏れを防ぐうえで重要です。
運用を続けるための決めごと
仕組みを作った直後は機能していても、運用が属人化すると次第に崩れていきます。続けるためには、次のような決めごとをあらかじめ明文化しておきます。
- 返信までの目安時間を、営業時間内・時間外それぞれで社内基準として決めておく
- 担当者が固定にならないよう、受付・一次対応の持ち回りを決めておく
- 「既読」と「対応済み」を別のものとして扱い、対応が完了した連絡には完了の印をつけるルールにする
特に既読と対応済みの区別は見落とされがちです。担当者がメッセージを読んだだけで安心し、実際の対応が漏れるケースは起こり得ます。対応状況を一覧できる状態にしておき、未対応のまま時間が経っている連絡がないかを定期的に確認する運用にしておくと安心です。
注意点
LINEを入居者対応の窓口にする際は、次の点に注意してください。
やり取りの中では、入居者の個人情報や家族構成、生活状況に関わる情報を扱うことになります。担当者以外が閲覧できない設定にする、退去後は保管・削除のルールを決めておくなど、個人情報の取り扱いは慎重に設計してください。
既読が付いたことと対応が完了したことは別だという前提も、関わる全員で共有しておく必要があります。既読を見た担当者が「誰かが対応するだろう」と思い込むと、対応漏れの原因になります。
LINEに寄せることは、電話をゼロにすることとは違います。緊急連絡や込み入った説明が必要な話は、電話のほうが早く正確に伝わる場合があります。LINEはあくまで窓口を整理し記録を残すための手段であり、電話を廃止する施策ではありません。
なお、この記事で触れた賃貸住宅管理業法や標準管理受託契約書に関する内容は参考情報です。制度や様式は改定されることがあるため、個別の判断や実務への反映にあたっては、国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルサイトなど最新の公式資料で確認するか、専門家に相談してください。
よくある質問
LINE対応を始めると、電話対応はなくなりますか?
なくなりません。水漏れやガス漏れなど放置できない緊急連絡や、金銭に関わる込み入った話は、電話や書面でのやり取りを残したほうが安全です。LINEは連絡の入り口を一本化し、記録を残すための窓口であり、電話を廃止するための施策ではありません。緊急連絡の定義を先に決めておくと、電話とLINEの使い分けがぶれにくくなります。
高齢の入居者にもLINEでの連絡は伝わりますか?
総務省情報通信政策研究所の令和5年度調査によれば、LINEの利用率は60代でも86.3%、全年代では94.9%に達しています。年代による差はそれほど大きくなく、高齢の入居者だからLINEが伝わりにくいという前提は成り立ちにくくなっています。
入居者対応の記録を残すのは、社内ルールだけの話ですか?
社内ルールにとどまりません。国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルサイトによると、管理業者はオーナーへの定期報告で少なくとも年1回以上、入居者からの苦情の発生・対応状況を報告する必要があるとされています。記録はこの報告義務を果たすためにも必要です。
出典・参考
- 総務省情報通信政策研究所「令和5年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書<概要>」— 全年代のLINE利用率94.9%、60代86.3% (公的統計)
- LINEヤフー株式会社「LINE、国内月間利用者数が1億ユーザーを突破」(ベンダー公表値) (ベンダー公表値)
- 国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト「管理業者の業務」 (法令ガイドライン)
- 国土交通省「賃貸住宅標準管理受託契約書」 (法令ガイドライン)
- 国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト (法令ガイドライン)

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